白内障
白内障とは、目の中でレンズの役割を果たしている「水晶体」という部分が、主に加齢などが原因で白く濁ってしまう病気です。カメラに例えると、レンズが曇ってしまったような状態であり、光が網膜まで十分に届かなくなったり、光が乱反射してしまったりすることで、視界がかすむ、光を眩しく感じるといった症状が現れます。白内障は、ご高齢の方であればどなたでも起こりうる非常に一般的な疾患ですが、放置してしまうと日常生活に大きな支障をきたすだけでなく、視力の回復が困難になるリスクも孕んでいます。当院では、患者さん一人ひとりの見え方の変化や生活背景を丁寧にお伺いし、今の状態に最適な治療法を一緒に考えることを大切にしています。お仕事や趣味、家事など、患者さんがこれまで通り豊かな生活を送っていただけるよう、医学的な根拠に基づいた安心感のある医療を提供いたします。「最近、少し目がかすむな」「新聞の文字が読みづらくなった」といった些細な変化でも、どうぞお気軽にご相談ください。私たちは、地域の皆さんの目の健康を守るパートナーとして、誠実な診療を心がけております。
白内障の症状について
白内障の症状は、濁り方や進行の度合いによって個人差がありますが、初期の段階では自覚症状が乏しいことも少なくありません。しかし、病状が進行するにつれて、以下のような具体的な困りごとが増えてくる傾向にあります。
まず、最も代表的な症状は視界全体が霧がかかったように白くかすんで見えることです。眼鏡を新しく作り直しても、あるいはレンズを丁寧に拭いてもスッキリと見えない場合は、白内障による水晶体の濁りが影響している可能性があります。また、光を非常に眩しく感じる「羞明(しゅうめい)」という症状もよく見られます。水晶体の濁りによって目に入ってきた光が乱反射するため、晴れた日の屋外や、対向車のヘッドライトなどが以前よりもギラギラと感じ、目を開けているのが辛くなることがあります。
視力の低下以外にも、ユニークな症状が現れることがあります。例えば、片方の目だけで見ているにもかかわらず、物が二重や三重に重なって見える「複視」の状態になることがあります。これは水晶体の中の濁りにムラがあるために起こる現象です。また、一時的に近くの文字が以前より読みやすくなるというケースも存在します。これは白内障の進行によって水晶体の屈折力が変化し、一時的に近視のような状態になるためですが、決して「目が良くなった」わけではなく、病気のサインであることを理解しておく必要があります。
その他、以下のような変化に心当たりはありませんか。
- 夕暮れ時や暗い場所で、極端に物が見えにくくなったと感じる。
- 色の鮮やかさが失われ、全体的に黄色っぽく、あるいは茶色っぽくくすんで見える。
- 運転中に道路標識の文字が二重に見えて、判断が遅れるようになった。
- ゴルフなどのスポーツで、ボールの行方を追うのが難しくなってきた。
これらの症状は、急激に現れるのではなく、数か月から数年という長い時間をかけてゆっくりと進行していくのが一般的です。そのため、「年をとったから仕方のないことだ」と見過ごしてしまいがちですが、早期に適切な診断を受けることで、より良い見え方を維持できる期間を延ばすことが期待できます。
白内障の原因について
白内障の原因として最も多いのは加齢によるものです。これを「加齢性白内障」と呼び、統計的には60代で約7割、70代で約8割、そして80代以上になるとほぼすべての人に白内障の兆候が見られると言われています。水晶体は主にタンパク質と水で構成されていますが、加齢に伴いこのタンパク質が酸化などの影響を受けて変性し、白く濁ってしまうのです。これは白髪が増えるのと同様に、一種の老化現象と言えます。
しかし、白内障の原因は加齢だけではありません。生活習慣や他の病気、外的要因によって若いうちから発症することもあります。その代表的な例が糖尿病です。血糖値が高い状態が続くと、水晶体の中の糖分が変化し、加齢性白内障よりも進行が早い白内障を引き起こすことが知られています。また、アトピー性皮膚炎の持病がある方も、合併症として白内障を早期に発症しやすい傾向にあります。これは顔周りへの強い痒みによって目を叩いたり擦ったりといった物理的な刺激が加わることや、代謝の異常などが関係していると考えられています。
外的要因としては、紫外線の影響が挙げられます。長年にわたって強い紫外線を浴び続けることは、水晶体のタンパク質を酸化させ、白内障のリスクを高める大きな要因となります。登山や屋外スポーツを好まれる方、屋外での作業が多い方は、サングラスや帽子の着用などの保護対策が推奨されます。また、目の怪我(外傷)によって水晶体が傷ついた場合や、ステロイド薬などの特定の薬剤を長期間使用している場合の副作用として、白内障が進行することもあります。
その他、胎児期に母親が風疹などの感染症にかかったことが原因で起こる「先天性白内障」や、ぶどう膜炎などの目の炎症に伴って発症する「併発白内障」など、原因は多岐にわたります。私たちは、単に目の状態を確認するだけでなく、患者さんの既往歴や生活スタイルを丁寧にお聞きし、なぜ白内障が進んでいるのかという背景も含めて診療することを大切にしています。
白内障の病気の種類について
白内障は、水晶体のどの部分から濁りが始まるかによって、いくつかの形態に分類されます。濁る場所によって症状の出方や、進行のスピードが異なるのが特徴です。
一つ目は「皮質白内障」です。これは水晶体の周囲(皮質)から中心に向かって楔状に濁りが広がっていくタイプで、最も多く見られる加齢性の変化です。中心部が透明なうちは視力が維持されやすいため、自分では気づきにくいことがありますが、濁りが中心にかかると急激に視界がかすみ、光を眩しく感じるようになります。
二つ目は「核白内障」です。これは水晶体の中心部にある「核」という部分が硬くなり、黄色や茶褐色に濁っていくタイプです。初期には自覚症状が少ないこともありますが、進行すると中心部の屈折率が変化し、近視が強くなります。そのため「最近、急に手元が見えやすくなった」と感じる場合は、この核白内障が疑われます。全体的に色がくすんで見えるのもこのタイプの特徴です。
三つ目は「後嚢下白内障(こうのうか白内障)」です。水晶体を包んでいる袋の、後ろ側の内面が濁るタイプです。比較的若いうちに発症することがあり、糖尿病やステロイド使用者に多く見られます。視界の中心部分から濁ることが多いため、初期から強い眩しさや視力低下を感じやすく、進行も比較的早いという特徴があります。
また、原因別の分類としては以下のようなものがあります。
- 加齢性白内障・・老化現象の一つとして起こる最も一般的なもの。
- 併発白内障・・ぶどう膜炎や網膜剥離、緑内障など、他の目の病気に続いて起こるもの。
- 外傷性白内障・・事故やスポーツでの打撃など、目に加わった強い衝撃が原因となるもの。
- 先天性白内障・・生まれつき水晶体に濁りがある状態で、乳幼児期の視機能発達に影響することがあります。
当院では、検査機器を用いて水晶体の濁りの位置や密度を正確に把握し、今の状態がどの種類に該当するのか、今後どのような経過を辿る可能性があるのかを、分かりやすい言葉で説明いたします。自身の状態を正しく知ることは、治療への不安を和らげる第一歩だと考えています。
白内障の治療法について
白内障の治療法には、大きく分けて「点眼薬による治療」と「手術による治療」の二つがあります。ここで重要なのは、一度濁ってしまった水晶体を、薬で元の透明な状態に戻すことはできないという点です。これを踏まえた上で、患者さんの生活の質を考慮した選択が必要となります。
点眼薬による治療(進行抑制)
初期の白内障で、まだ視力低下や日常生活への支障が少ない場合には、点眼薬を使用することがあります。これはあくまで「濁りの進行を遅らせる」ことを目的とした保存的な療法です。すぐに手術を希望されない場合や、年齢的・全身的な状況から経過観察が適当と判断される場合に行われます。点眼を継続することで、白内障の進行を完全に止めることはできませんが、緩やかにする効果が期待できます。
白内障手術(根本的な治療)
白内障を根本的に治し、視力を回復させる唯一の方法は手術です。現代の白内障手術は非常に確立された安全性の高い治療法となっており、多くのクリニックでは日帰りでの実施が可能です。手術は、局所麻酔を丁寧に行った上で、顕微鏡下で行われます。角膜の端をわずか数ミリほど切開し、そこから超音波の器具を挿入して、濁った水晶体の中身を細かく砕いて吸い出します。その後、空になった水晶体の袋の中に、人工の「眼内レンズ」を挿入して固定します。手術時間は目の状態にもよりますが、スムーズに進めば10分から15分程度で終わることがほとんどです。
眼内レンズの種類
手術で挿入する眼内レンズには、大きく分けて単焦点レンズと多焦点レンズがあります。単焦点レンズは、遠くか近くか、あらかじめ決めた一点にピントを合わせるレンズです。ピントが合っていない距離を見るためには眼鏡が必要になりますが、コントラストがはっきりしており、公的医療保険が適用されるというメリットがあります。一方、多焦点レンズは、遠近両方、あるいは遠中近の複数箇所にピントが合うように設計されたレンズです。眼鏡への依存度を低くできる可能性がありますが、レンズの種類によっては選定療養(費用の一部が自己負担)となる場合があり、また光の滲みを感じるなどの特性もあります。
手術を受けるタイミングに「正解」はありません。しかし、車の運転に不安を感じるようになったり、趣味の読書が楽しめなくなったりした時は、手術を検討する良い時期かもしれません。当院では、患者さんのライフスタイルに合わせて、最適な手術時期やレンズの選択肢を一緒にじっくりと検討していきます。手術に対する恐怖心を取り除けるよう、徹底した事前説明と配慮を行っておりますので、どうぞご安心ください。
白内障についてのよくある質問
Q1.手術は痛くないですか?
A1.手術は点眼麻酔や局所麻酔を十分に行いますので、手術中に強い痛みを感じることはほとんどありません。意識ははっきりしていますが、目元を布で覆い、眩しい光を見ている間に終わります。押されるような感覚や、水が流れる感覚はありますが、痛みについては過度な心配をなさらないでください。
Q2.両目を同時に手術することはできますか?
A2.一般的には、安全性を考慮して片目ずつ数日から数週間の間隔を空けて手術を行うことが多いです。術後の経過や感染症のリスク管理、そして片方の目の見え方に慣れていただく期間を設けるためです。ただし、患者さんのご事情や施設の体制によっては、医師の判断により両日を短い間隔で行うこともありますので、ご相談ください。
Q3.手術後、視力はすぐに良くなりますか?
A3.手術直後から「明るくなった」と感じる方が多いですが、視力が安定するまでには通常1か月から2か月程度の期間を要します。術後は炎症を抑えるための点眼薬を一定期間、スケジュール通りに使用していただくことが非常に重要です。また、最終的な視力に合わせて眼鏡を新調する場合は、視力が安定するのを待ってから処方することをお勧めしています。
Q4.白内障手術をすれば、老眼も治りますか?
A4.単焦点レンズを使用した場合は、ピントを合わせた箇所以外を見るために眼鏡が必要になるため、いわゆる老眼のような状態は残ります。多焦点レンズを選択した場合は、眼鏡の使用頻度を大幅に減らすことが期待できますが、完全に10代のような調整力を取り戻すわけではありません。ご自身の生活でどこにピントを合わせたいかを、事前によく話し合うことが大切です。
院長より
目の見え方が悪くなるということは、私たちが想像する以上に不安で、孤独を感じることもあるかもしれません。大好きなテレビが見えにくくなったり、お孫さんの顔がぼやけてしまったりすることは、生活の彩りを奪ってしまうことにも繋がります。相鉄線希望ヶ丘駅近くの当院では、白内障の治療を通じて、患者さんが再び明るく鮮やかな世界を取り戻すお手伝いをしたいと心から願っています。
私たちは、一人ひとりの患者さんの声に耳を傾け、白内障だけでなく、その背景にある不安や疑問を解消できるような温かみのある診療を大切にしています。最新の知見に基づいた確かな技術を提供することはもちろんですが、それ以上に「ここで相談してよかった」と思っていただけるような安心感を提供することが、私たちの使命だと考えています。白内障は適切に対処すれば、再びクリアな視界を得ることができる可能性が高い病気です。手術が必要な場合でも、決して無理に勧めることはありません。患者さんがご自身の意志で「もっとよく見えるようになりたい」と思えるまで、寄り添いながらサポートいたします。目に関するどんな小さなお悩みでも、どうぞ遠慮なくお聞かせください。皆さんの毎日が、より輝かしいものになるよう、スタッフ一同、真心込めて対応させていただきます。
